2008-01-11

迷子

悲しみは、いつの間にか溜まっていて
ある時、堰を切ったように流れ出す。
前触れもなく、涙と共に流れ出す。
積み重なった時たちの中に私はいて
過去がどんどん増えていく。
私の中にある歴史はもう消せなくて
いくら新しい別の人生を歩こうと思っても
未来よりも過去を重たく背負ってしまう。
過去は、苦しくても辛くても光っていて
色あせた陽だまりの中に漂っている。
だから帰りたくって
私を証明する紛れもない過去に帰りたくって
あなたの元に帰りたくって途方にくれる。
今からどこに行けばいいのかわからない

こんなところで迷子になって
置いてきたものばかり探してる。







어모님 감사함니다

あなたがいなくなったこの世界が信じられない。
オモニ。
あなたは、今いったいどうしているのです。
天国から私を見て、そこでどうしているのです。
私を苦しめ続けて、私はここまで逃げてきたのに。
あなたがいなくなてしまったら、私は何から逃げいていたらいいのかわからない。
年末に、久しぶりに、本当に何年ぶりかにあなたの声を
聞いた。
病室からの国際電話。
息をハアハアさせながら「運命だと思って・・・運命だと思ってがんばってや・・・」と私に言った。
そうか、私の運命か。
あなたが病床にあってあと数日の命というのも、あなたの運命か。
「ありがとう」と私は言った。
それしか思い浮かばなかった。
何に対してありがとう?
死に行く者を前にして、私とあなたの過去を考え、私は何と言ったらいいのだ。
「がんばって」とは言えなかった。
苦しみの真っ只中にいるのに、これ以上頑張るなんて辛すぎる。
あなたに何と言ったらいいのだ。
「ありがとう」は、あなたが私にくれた辛い思い出、拷問の日々に対してだ。
あそこまで、私を追いつめてくれて・・・「ありがとう」。
決して忘れることができない過去を「ありがとう」。
そのお陰て私は今ここにいる。
こんなに強くなって、こんなに柔軟になって・・・。
私はあなたとの生活から、どんな状況にあっても生きることができる術を覚えたのだ。
もう、何年も会っていないのに、もう会うことはできなくなってしまった。
元夫が「もう焼かれて、骨だけになってしまったよ・・・」と静かに言った。
私の子供たちもその骨を拾い骨壷に納めたそうだ。
私の中のオモニは、決して骨ではなく、今もまだあの薄笑いを浮かべびっこを曳いて歩く姿。
センスの悪い派手な洋服に金のネックレスをブラブラさせて、強気で話す大阪訛りのしわがれ声。
私は・・・私は、とうとう地球の反対側までやってきて、上辺だけでも幸せに生きています。
「ありがとう、オモニ」
私は、あなた家の嫁でした。
至らないことばかりの嫁でした。
それは、決して消すことのできない事実です。
だから、あなたに言うのです。

감사함니다.